暑さに強い巨大きのこ「仁王しめじ」とは?七会きのこセンターに聞く夏場のきのこ栽培と暑さ対策
2026/08/27
コラム
きのこといえば、秋から冬にかけて食べるもの。そんなイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。
実際、夏場はきのこの需要が落ちるため、生産量を減らす生産者も少なくありません。しかし、会社の規模によっては栽培施設の維持や従業員の雇用などを考えると、生産を止めることも難しいのが現状です。
そんな「きのこの需要が落ちる夏」に、暑さに強いきのこを栽培し、夏ならではの需要をつくろうと取り組んでいるのが、茨城県東茨城郡城里町の七会きのこセンター様です。
今回は、七会きのこセンター様で7~8月限定で栽培している『仁王しめじ』を中心に、夏場の栽培の工夫や、少量多品目で取り組むきのこ栽培について、栽培を担当されている渡邊さんにお話を伺いました。
夏の需要が落ちる時期に「夏のきのこ」を栽培

七会きのこセンター様では、しいたけやまいたけ、きくらげ、はなびらたけなど、約10種類のきのこを栽培しています。また、自社で菌床を製造し、他の生産者への販売も行っています。
業界では珍しく、季節や人員の状況に合わせて、さまざまなきのこを栽培する”少量多品目”が特徴です。
その中で、夏季限定で栽培しているのが『仁王しめじ』です。
仁王しめじはアフリカやアジアなどの亜熱帯地域に生息する大型の食用きのこです。暑さに強いこともあり、七会きのこセンター様では7~8月の2カ月間栽培しています。
きっかけは、夏場に生まれる“すき間”でした。
「夏はきのこの需要が落ちるので、生産数も下がります。そこで、その“すき間”を使って何かできないかと考えました」(渡邊さん)
ただ、空いた“すき間”を埋めることだけが目的ではありません。
日本では、秋になるときのこを食べたくなるように、季節と食べ物が結びついています。
「日本人は旬を大切にする文化があります。だからこそ、夏に需要が減る時期に、夏のきのこを提案するという考え方で始めました」(渡邊さん)
仁王しめじやきくらげは、夏に旬を迎えるきのこです。需要が落ちる時期だからこそ、今楽しめるきのこを提案する。夏場に生まれる“すき間”も活用しながら、夏のきのこ需要をつくっていく。
そんな考えから、仁王しめじの栽培が始まりました。
「もっと作れば売れる」それでも、量を増やさない理由
▲画像提供:七会きのこセンター様
七会きのこセンター様でも、「もっと生産すれば売れる」という手応えは感じています。それでも、現在の生産量を大きく増やすことは考えていません。
「本腰を入れて人員や設備を増やせば、周年で栽培することもできます。でも、今あるマスの中でやりたいと思っています」(渡邊さん)
背景にあるのは、七会きのこセンター様が大切にしている”少量多品目”という考え方です。
春先は菌床づくり、夏は仁王しめじ、秋から冬はきのこ栽培の最盛期。冬が旬のひらたけの仲間『寒茸(かんたけ)』もあります。
仁王しめじは、こうした年間の仕事のバランスを見ながら始めた取り組みでもあります。
40℃に達する夏。暑さに強い仁王しめじにも変化が

暑さに強い仁王しめじですが、近年の夏の暑さには、これまでと同じ管理では対応できなくなってきました。
栽培を始めた2020年当時は、エアコンを使わず、室温30℃程度で栽培していました。ところが近年は、夏場になると室温が40℃に達することもあります。
「さすがに40℃になると、仁王しめじもしおれてしまうようになりました」(渡邊さん)
そこで、現在は栽培環境を工夫しています。
仁王しめじの栽培室の半分では、暑さに強いきくらげも栽培しています。きくらげは26℃、仁王しめじは28℃を目安に管理しているため、間仕切りの一部を開け、きくらげ側の冷気が仁王しめじ側にも流れるようにしました。
新しい設備を増やすのではなく、今ある栽培スペースや設備を使って、それぞれのきのこに合わせて環境を調整しています。
きのこの生育に影響する、温度管理
きのこ栽培では、温度管理が重要です。
七会きのこセンター様では、栽培するきのこの種類に合わせて温度を設定しています。夏場は、最も低いまいたけで18℃、高いきくらげなどでは25℃程度が目安です。
ただ、夏場は設定した温度をそのまま維持するのが難しいこともあります。
外気温の影響を受けるだけでなく、栽培室内ではきのこからも熱が発生するためです。
「例えば室内を23℃にしたい場合、夏場は少し上振れすることを考えて21℃に設定することがあります」(渡邊さん)
1~2℃の違いでも、きのこの成長スピードや大きさに影響することがあります。
特に夏場は、設定温度だけを見るのではなく、実際の栽培室やきのこの状態がどうなっているかを人の目で見ながら調整することが大切です。
換気をしながら、冷気を逃がさない。熱交換器の活用
夏場の栽培では、換気も欠かせません。
ただ、冷房で温度を下げている栽培室内で換気をすると、せっかく冷やした空気が外へ逃げ、暑い外気が入ってきてしまいます。
そこで活用しているのが、ニッポーの熱交換器「SKシリーズ」です。
外気をそのまま取り込むのではなく、室内から排出する空気と熱交換することで、外気による温度への影響を抑えながら換気します。
七会きのこセンター様では、特に夏場、外気温が高くなるほど熱交換器の効果を感じているそうです。
「外気が上がるほど、熱交換器の効果は高まっていると思います。また、もう一つ助かっているのがメンテナンスのしやすさです。特にきくらげは胞子が多いため、最盛期には3日に1回程度、熱交換器を水洗いしています。発生室で丸ごと水洗いできるのが非常に助かっています」(渡邊さん)
エアコンは高い位置に設置されているため、フィルターを清掃する際には脚立が必要になります。一方、熱交換器は手の届く範囲で洗えるため、日々の清掃もしやすいそうです。
「小さな工夫」の積み重ねで、夏の環境を守る
栽培室の出入り口には、室内の冷気を逃がさないために厚手のビニールカーテンを設置しています。出入りするときも、できるだけ開ける幅を小さくして、すぐに閉める。こうした小さな工夫も、温度管理の一つです。
「根本的な暑さ対策は難しいですが、できることを一つずつやっています」(渡邊さん)
近年は、これまでの経験だけでは対応しきれないほど夏の暑さが厳しくなっています。
だからこそ、設備を入れるだけではなく、今ある設備をどう使うか、日々の管理をどう工夫するかも大切です。
仁王しめじを「広告塔」に。地域全体で新しいきのこを

七会きのこセンター様では、仁王しめじの菌床を他の生産者にも販売しています。
実際に仁王しめじの栽培を始めた事業者もあり、少しずつ栽培する生産者も増えています。
「仁王しめじが目立つことで、しいたけやまいたけなど、他のきのこの認知も広まればと思っています。仁王しめじには広告塔になってもらいたい。
こうした栽培モデルを知ってもらい、『自分もやってみようかな』と他の生産者様や就農希望の方が、一歩踏み出すきっかけになれば嬉しいです」(渡邊さん)
少量多品目だからこそ、新しいきのこに挑戦できることは、七会きのこセンター様の強みの一つです。一方で、品目が増えるほど管理は複雑になります。
「少量多品目のきのこ栽培は珍しいと思います。でも、マニュアル化できない、属人的になってしまうところがあります。1品目をたくさん作って、商流を組み立てて、マニュアル化することも、その会社の強みだと思います。それぞれのマーケティング戦略だと思います。一つのモデルケースとして、こういうやり方もあるんだということを知ってほしいですね」(渡邊さん)
需要が落ちる時期をどう使うか。今ある設備や人員をどう組み合わせるか。
七会きのこセンター様の仁王しめじ栽培には、少量多品目だからこそできる工夫や、夏という季節を活かすためのさまざまなアイデアが詰まっていました。



