菌床きのこの栽培におすすめの捕虫器の種類と選び方

2023/11/17

きのこ栽培システム

シイタケやツクリタケ(マッシュルーム)の菌床栽培では、キノコバエ類の害虫被害が問題となります。これらの害虫に使える農薬がないため、その対策として用いられるのが捕虫器です。捕虫器のキノコバエを捕まえる仕組みには種類があり、メンテナンス方法やランニングコストが異なります。今回はきのこの菌床栽培に適した捕虫器の種類について解説します。

キノコバエ類の被害

▲キノコバエ


キノコバエはきのこの食害や病気を媒介する厄介な害虫です。ツクリタケ(マッシュルーム)やシイタケではクロキノコバエ、シイタケではナガマドキノコバエが駆除の対象となります。また、キクラゲやしめじ、マイタケなどにもキノコバエ類の被害が報告されています。これらのキノコバエは外部から侵入し、幼虫の時期には子実体や菌糸の食害、成虫になると褐斑病などの病気を媒介するなど、商品価値の低下と生産量の減少をもたらします。

キノコバエの捕虫方法の種類と仕組み


捕虫器は害虫を誘引して捕獲する仕組みを持っています。害虫を誘引する方法としては、光を使う方法と乳酸発酵液などのにおいを使う方法があります。また、誘引した害虫を捕獲する方法としては粘着シートに付着させる、ファンで吸引する、捕虫液の泡に付着させる方法があります。これらの仕組みを組み合わせた捕虫器が各社から販売されています。




光による誘引

光源としては蛍光灯やLEDが使われます。誘引効果に影響があるのは光の色(光の波長)であり、いくつかの研究機関の報告では、青色灯と白色灯では青色灯、近紫外線LED、紫LED、黄LEDの順で誘引効果が高いとされています。光を点灯させるための電源はAC電源を用いるものと乾電池を用いるものがあります。



においによる誘引

キノコバエ類は菌床の発酵臭に誘引されることがわかっています。製品では乳酸発酵液を固形化したものや、捕虫液として容器に溜めておくものなどがあります。



粘着シートによる捕獲

いわゆるハエ取り紙のような形態で設置する捕虫器です。粘着シートの形状は製品によってさまざまです。粘着シート単独で用いられるものもありますが、光や乳酸発酵液など組み合わせた製品のほうが効果が見込めます。最大のメリットは単価が安いことで、販売されている製品は数千円程度のものがほとんどです。捕獲効果に合わせて臨機応変に数量や設置場所を決められます。

粘着シートを単独で用いるものは単価が低く簡便な方法である一方、キノコバエが付着した粘着シートの交換作業に手間がかかるデメリットがあります。また、頻繁に交換する必要がある場合はランニングコストがかかります。





吸引ファンによる捕獲

光によって誘引し、捕虫器に設けられたファンによりキノコバエを吸い込んでしまう捕獲方法です。光による誘引と組み合わせて用いられます。 ファンを駆動するために電源を確保する必要がある点と、誘引されたキノコバエを確実に捕獲できないものもあるのがデメリットです。





泡による捕獲

においによる誘引効果のある捕虫液をエアレーションにより泡立て、泡の表面に付着して飛べなくなるキノコバエを捕獲する方法です。キノコバエの誘引には光も併用されます。きのこ生産者のアイデアをもとに、株式会社ニッポーが商品化した「ハエと~る」はこの方式です。


▲捕虫器「ハエと~る」の泡による捕獲




光で誘引し泡で捕らえる捕虫器「ハエと~る」とは

▲捕虫器「ハエと~る」



ニッポーが開発した捕虫器「ハエと~る」は1台で24時間あたり2,564匹のキノコバエを捕獲したという実証データがあります。(※1台あたりの有効面積は100㎡)
使い方は簡単です。水槽内に水で希釈した専用捕虫液を入れます。電源を入れるとエアレーションによる泡が発生するので、あとはそのままキノコバエが捕虫されるのを待ちます。泡に付着して飛べなくなったキノコバエは泡が貯められた水槽内に沈んでいくため、約3日ごとに水を交換します。



▲ハエと~るで捕虫したキノコバエ



農薬を使えないきのこの菌床栽培において、害虫を防ぐための捕虫器は欠かせない設備のひとつです。栽培棟の面積やキノコバエの発生状況によって必要な捕虫器の性能や台数は異なります。品質の高いきのこを安定的に生産するために、性能とメンテナンスの手間、ランニングコストを勘案して適切な捕虫器を選びましょう。

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