通信変換器とは?データの一元管理を進める方法と仕組み

2025/10/23

コラム

工場や製造現場では、RS485やCANといった多様なシリアル通信規格が混在し、データの一元管理を妨げる大きな要因となっています。こうした課題を解決するのが「通信変換器」です。
本記事では、通信変換器の仕組みや必要性、基板設計や実装時のポイント、さらに工場DXに活用できるシステム例を解説します。効率的な運用と将来の拡張性を考える技術者に必見の内容です。

通信変換器とは?仕組みと必要性を理解する


製造現場へのIoTシステムの導入が進む中で、多くの技術者が直面する課題のひとつに「通信規格の乱立」があります。RS232CやRS485、CAN、Ethernetなど、機器ごとに異なる規格が採用されており、直接の接続や統合が難しいケースは少なくありません。ここで役立つのが「通信変換器」です。

通信変換器とは、異なる通信方式やプロトコルを相互に変換し、スムーズなデータ伝送を可能にする装置のことです。例えばシリアル通信で動作する制御機器と、LANで接続する上位システムをつなぐ場合、電気信号レベルの変換や伝送速度の調整、データ単位の整合を行う必要があります。通信変換器はこうした課題を吸収し、双方が理解できる形式へと変換する仕組みを備えています。

動作原理

入力された信号を内部で一度デジタルデータとして受け取り、対象のプロトコルに合わせて再構築します。

この際、通信速度の違いやデータフォーマットの不一致を調整し、必要に応じてエラーチェックや訂正を行うことで、異なる規格の機器同士でも安定した通信を実現します。なお、信号処理用のDSPを搭載してフーリエ変換のような高度な処理を行うモデルも存在しますが、それは特殊用途向けの高価な製品に限られ、一般的な通信変換器では主に規格変換と基本的なエラー処理が中心です。

こうした通信変換器の導入は、データの一元管理において極めて重要です。複数の規格を持つ機器を同一ネットワークに統合することで、管理者は一つのプラットフォーム上で全ての情報を把握でき、システム全体の効率化や運用コストの削減につながります。


さらに、将来的に新たな機器や規格が追加されても、通信変換器を介すことで柔軟に対応できるため、拡張性の確保にも有効です。

このように通信変換器は、単なる「規格の橋渡し」にとどまらず、工場DXやIoTシステムの基盤を支える重要な要素といえるでしょう。

通信変換基板の設計と実装ポイント


通信変換器をシステムに組み込むためには、プリント基板の設計と実装が欠かせません。基板は単なる部品の集合体ではなく、信号の品質や装置の信頼性を左右する重要な要素です。特にRS485やCANなどの高速シリアル通信を扱う場合、アートワーク設計やレイアウトの工夫が安定動作の鍵となります。

設計のポイント

設計段階では、基板の層構成を検討します。
2層基板でも実現可能ですが、信号線とグラウンドを確実に分離できる4層基板を選択することで、ノイズ耐性が高まり通信エラーを低減できます。ランドやレジストの設計も重要で、実装時に過度なストレスがかからないよう配慮することが、長期的な信頼性を高めるポイントです。

実装のポイント

実装では、部品配置のバランスと配線の引き回しが大きな課題となります。
特に差動信号ライン(RS485、CAN)は、ペア間のインピーダンスを揃える(インピーダンスマッチング)ことが求められます。アートワーク設計時には、配線長のバランスやクロストークの抑制を意識し、基板全体のシグナルインテグリティを確保する必要があります。また、修理や改造を考慮して、テストランドやアクセスしやすいコネクタ配置を設けると保守性が向上します。
さらに、ファームウェアのコーディングやプロトコル変換のやり方も基板設計と一体で考えるべきです。ハードウェアが優れていても、ソフトウェア制御が不十分であれば通信速度やデータ量に制約が生じ、システム全体の性能を発揮できません。そのため、通信変換基板の設計は、ハードとソフトを統合的に最適化する取り組みが求められます。

このように通信変換基板の設計と実装は、単なる回路製作にとどまらず、通信品質とメンテナンス性を両立させるための総合的な工夫が求められる分野です。

工場DXに役立つ通信変換の活用例


工場におけるDX推進では、現場の機器から得られる膨大なデータを“いかに効率的に収集・管理するか”が重要な課題です。しかし実際には、PLCやセンサー、各種制御機器はRS485やCANなどの従来通信を利用しており、一方で上位システムはLANやクラウドを活用するなど規格が分断されているケースが多く見られます。

ニッポーの「RS485/RS422-LAN通信変換基板」は、従来のシリアル通信機器をLAN環境に接続できるため、既存設備を活かしつつリアルタイムでデータを収集・一元管理することが可能です。
例えば、生産ラインの温湿度センサーや稼働状況を監視するPLCからRS485で送られる情報をLANに変換することで、工場全体の状況を一括把握でき、異常検知や保守対応を迅速化できます。また、遠隔監視やデータのクラウド連携も容易になり、スマートファクトリー実現の大きな一歩となります。
また、既製品を活用することで開発工数を削減しつつ、自社設計の基板との組み合わせで柔軟なシステム構築を行うことができます。

●使用例


このように通信変換器は単なる規格変換にとどまらず、工場DXを支えるデータ基盤として大きな役割を果たします。

通信変換器は、RS485やCANなどの従来規格とLANをはじめとする新しいネットワークをつなぐ重要な役割を担います。基板設計や実装では、アートワークやレジスト、ランド設計などの工夫が信頼性を左右し、適切な製品選択によって開発効率も向上します。
工場DXにおいては、機器のデータを一元管理し、生産性や保守性を高める基盤となります。今後のスマートファクトリー実現に不可欠な要素として、積極的な活用が求められるでしょう。

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