きのこの出荷ロスを防ぐ!抑制のポイントと管理のコツ
2025/12/11
コラム
きのこの品質を安定させるためには、適切な栽培管理と出荷工程での鮮度保持が欠かせません。特に菌床シイタケ、ぶなしめじ、エノキタケ、エリンギ、まいたけ、ナメコといった主要品目は、温度や湿度、収穫のタイミングなどの影響を受けやすく、管理の違いで歩留まりに差が出ます。
そこで今回は、きのこ農家が出荷ロスを抑えるために押さえておきたい要因と管理の基本について整理します。
きのこ出荷におけるロスの現状と課題
きのこは収穫後の状態が崩れやすく、外観や鮮度が落ちることで規格外品が出たりロスになってしまうことがあります。
傘が開きすぎる、色がくすむ、軸がやわらかくなる、といった変化が代表的な要因です。
また、常温での放置や温度変化によって品質が落ちたり、輸送中の振動で傘が欠けたり、軸が折れたりするトラブルもロスにつながります。とくに高温多湿の時期は、こうした問題が起きやすくなるため注意が必要です。
出荷ロスを引き起こす主な要因

出荷ロスを抑えるためには、原因を理解したうえで、収穫や管理の各段階で適切な対応を行うことが重要です。以下に出荷ロスを引き起こす4つの要因をまとめました。
①過成長
菌床栽培のきのこは成長が早いため、収穫が遅れると傘が開きすぎたり、軸が曲がったりして規格外品が増えてしまいます。
②変色・気中菌糸
ぶなしめじや菌床しいたけ、エリンギなどは、温度や湿度が合わない状態が続くと色がくすんだり、白カビと誤解されることがある気中菌糸が発生することがあります。
③腐敗
ナメコなど出荷前に水洗いする品目は、冷蔵庫での温度管理が不十分だと早く傷みます。
④物理的損傷
収穫後の保管や輸送中の振動・衝撃で、傘が欠けたり軸が折れたりすることがあります。
ロスを防ぐための抑制ポイントと管理方法

前章で紹介した原因を踏まえ、ここからは4つの抑制ポイントをご紹介します。
①収穫時期の見極め
菌床しいたけなどは、傘が完全に開く前に収穫することで長持ちしやすくなります。
ぶなしめじやエノキタケは、発生密度、温度、湿度、CO₂濃度などを調整し、形がそろった状態で収穫することが大切です。
②発生環境の調整
きのこ栽培では、湿度・通気・CO₂濃度の管理が重要です。これらの条件が安定していないと、原基の出方がそろわず、形や大きさにばらつきが出やすくなります。また、過剰な湿度や通気不足は気中菌糸の発生につながることがあります。
発生環境を適切に調整することで、過成長や変色などのトラブルを抑制し、品質のばらつきを減らすことができます。
③予冷と輸送の工夫
収穫後のきのこは温度が上がりやすく、鮮度が落ちやすいため、できるだけ早く低温帯に下げることが欠かせません。一般的には5〜10℃前後まで素早く予冷することで、品質の劣化を抑えやすくなります。
輸送は冷蔵車を使用し、水分の蒸散を抑えながら袋内部が蒸れにくい鮮度保持フィルムを利用すると、結露や褐変の発生を低減できます。
さらに、輸送中の振動は傘の欠けや軸折れにつながるため、箱の中に隙間をつくらない詰め方や、必要に応じた緩衝材の使用が重要です。
④出荷形態に応じた保存方法と販売方法の選択
生鮮きのこは冷蔵流通が基本で、できるだけ早めに販売することが鮮度保持につながります。
また、出荷量や販路に応じて、乾燥品・水煮・冷凍品などの加工形態を組み合わせることで、余剰分のロスを減らすことができます。生鮮として扱いにくい規格外品を加工用に回すことで、歩留まりの向上にもつながります。
きのこの出荷ロスは、過成長や温湿度の乱れ、輸送中の損傷など、さまざまな要因が重なることで発生します。収穫時期の見極め、発生環境の管理、予冷や包装材の工夫といった工程ごとの対策を積み重ねることで、品質のばらつきやロスの発生を抑えやすくなります。
また、生鮮・乾燥・水煮・冷凍といった出荷形態を組み合わせることで、余剰分の活用や販売機会の拡大にもつなげることが可能です。
日々の管理を見直し、栽培から出荷まで一貫して鮮度保持を意識することが、安定した生産体制づくりとロス削減への近道です。

