きのこ菌床は種苗法で守られている?自家増殖と拡大培養の違いと注意点

2025/11/13

コラム

きのこ栽培では、菌床(きんしょう)を使った生産方式が主流になっています。
しかし、この菌床のもととなる“種菌”や“品種”には、種苗法という法律が関係していることをご存じでしょうか。
自家増殖(自分で菌を増やすこと)や拡大培養(他者へ販売・譲渡すること)には明確な線引きがあり、知らずに行うと法律違反に該当する可能性があります。
この記事では、きのこ菌床と種苗法の関係、自家増殖と拡大培養の違い、そして法令遵守のポイントをわかりやすく解説します。

きのこの菌床と種苗法の基本知識


種苗法とは、農作物やきのこなどの新品種を保護するための法律です。
登録された品種は、育成者(開発者)の権利が保護され、許可を得ずに製造・販売することが禁じられています。
菌床や種菌も、この“登録品種”に該当する場合があります。
たとえば、農研機構や民間メーカーが開発した種菌は、登録番号・品種名が付与されており、販売や譲渡には契約が必要です。知らずに複製した菌床を他者に譲渡したり販売したりすると、育成者権侵害となり、損害賠償の対象になることもあります。
過去には、登録菌株を無断で培養・販売し、摘発された事例も報告されています。

自家増殖と拡大培養の違いと注意点


「自家増殖」とは、自分で購入した菌床や種菌から、自家利用の範囲内で再利用する行為を指します。
一方、「拡大培養」とは、菌を培養して他者に販売・譲渡する行為のことを意味します。
自家増殖は、登録されていない品種であれば原則自由ですが、登録品種は育成者の許諾が必要です。農林水産省は、登録品種を許可なく増やすことは、たとえ国内での使用であっても法律に違反するとしています。

また、SNSやフリマサイトなどで「自家培養済み菌床」や「自家採取菌」を販売する行為も、実質的には拡大培養にあたり、法的に問題視されます。
拡大培養を行う際は、契約書の有無・ライセンス内容・販売範囲を明確に確認しておくことが重要です。

安全な菌床入手と法令遵守のポイント


きのこ栽培を安全に行うためには、正規ルートでの菌床・種菌の購入が基本です。
販売元の業者サイトやカタログには、登録品種名・登録番号・販売許可情報が記載されていることが多いため、必ず確認しましょう。

菌床の購入時には、業者ごとに契約手続きが異なる点にも注意が必要です。
登録品種を扱うメーカーでは、「種菌売買契約書」や「自家増殖禁止に関する確認書」の提出を求められることがあります。
これらは、種苗法に準じた取り扱いを明確にするための書面であり、購入者が権利関係を理解していることを証明するものです。契約内容には「販売地域」「使用目的」「譲渡・増殖の可否」などが定められているため、署名前に必ず内容を確認しましょう。書面で合意することで、販売側も購入側も法的トラブルを未然に防ぐことができます。
また、登録済み品種の一覧は農林水産省の「品種登録データベース」からも検索可能です。

契約を伴う種菌を扱う場合は、ライセンス契約書の内容を理解し、販売・譲渡・複製の可否を確認することが大切です。正しい手順を踏むことで、法令を遵守しつつ、高品質なきのこ生産が可能になります。


きのこ菌床や種菌は、種苗法の保護対象に含まれる場合があります。
自家増殖や拡大培養を行う際には、法的な位置づけを理解し、許諾の有無を確認することが重要です。正規ルートでの入手や契約に基づく取引を行うことで、トラブルを未然に防ぎ、安心して生産を続けられます。菌床の取り扱いや導入について不明点がある場合は、専門業者または行政機関へ早めに相談しましょう。

ニッポーでは、これからきのこ栽培を始められる方に向けて、最適な栽培システムのご提案を行っています。栽培を検討されている方はぜひ一度ご相談ください。

▼関連資料

【カタログ】きのこ栽培シリーズ