きのこ栽培に必要な温度・湿度・光条件の基礎知識

2025/09/11

コラム

きのこ栽培で大切なのは、菌床や種菌の良し悪しだけではありません。温度・湿度・光といった環境条件をいかに整えるかで、発生の成否や収穫の安定性が大きく変わります。特にヒラタケのような菌床栽培では、わずかな湿度の変化や換気不足が発生不良につながることもあります。

今回は、きのこをこれから育ててみたい初心者や、環境管理に悩んでいる方に向けて、「温度・湿度・光の基本」と「うまく育てるために必要な設備」について、わかりやすくまとめました。

きのこ栽培に必要な環境条件とは?


菌床栽培では、栽培のステップに合わせて管理すべき環境も変わります。

温度

培養段階では20〜25℃ほど、発生段階では10〜18℃前後が適温とされています。温度が高すぎると菌糸の伸びが弱くなり、逆に低すぎると発生が鈍る原因になります。栽培時期や品種によっても調整が必要です。

湿度

きのこは湿度の高い環境を好みます。発生期は85〜95%の湿度が理想とされており、湿度が足りないと表面が乾いてきのこが育ちにくくなります。一方で、湿度が高すぎるとカビが出やすくなるため注意が必要です。特におが粉を使った菌床では、保湿性とのバランスもポイントです。

きのこは植物と異なり光合成を行いませんが、光は発生や形状、色味に大きく関与する刺激要素として重要な役割を果たします。完全な暗室で栽培を続けると、軸が細長くなったり、傘が開ききらなかったりと、見た目にも商品価値が下がる傾向があります。

特にヒラタケやブナシメジ、エリンギなどは、一定の弱光(200〜1,000lx程度)を断続的に与えることで形が整いやすく、色味も安定します。逆に、光が強すぎると菌床の表面温度が上がりすぎて乾燥しやすくなるほか、菌糸の活性が乱れる場合もあります。

また、照射時間も品質に関係します。たとえば発生初期に1日4〜6時間程度の照射を行い、その後は自然光に近い周期(昼夜リズム)で調整することで、成長バランスの良いきのこに仕上がりやすくなると報告されています。

温度・湿度管理が難しい理由とその対処法


「温度や湿度、光をコントロールすればいい」とは言っても、実際の現場では簡単にはいきません。特に外気温の変化や季節による影響は大きく、栽培室の環境は思っている以上に不安定になりやすいです。

たとえば、朝晩の気温差で室温が急に下がったり、梅雨時期に湿度が高くなりすぎたり。逆に冬場は加湿しても湿度が足りず、菌床が乾いてしまうこともあります。

コンテナなど密閉型の施設で育てている場合、換気不足でCO₂が溜まり、きのこの形がいびつになったり、そもそも発生しないといったトラブルもよくあります。

環境を安定させるためのおすすめ設備


光や照度は、ただ照らせば良いというものではありません。照度・時間・波長などの要素をうまくコントロールすることで、形の整ったきのこを安定的に育てることができます。特に菌床栽培では、日照に頼らず人工照明で管理することが一般的であり、専用の照明設備や照度調整システムの導入が欠かせません。
ここでは、きのこ栽培現場で導入が進んでいる代表的な光関連設備をご紹介します。

●LED栽培照明

きのこ栽培専用に開発されたLED照明は、発生初期に必要とされる中〜低照度域(200〜1,000lx程度)に特化した出力ができるものもあります。棚全体を均一に照らすことができるものだと、色むらや形状不良の発生を防ぐことが可能です。
また、赤外域をカットできるものを選ぶと発熱を抑えることができるため、菌床の乾燥リスクを最小限に抑えられます。

●デジタルタイマー/照度コントローラ(調光ユニット)

照明機器と組み合わせて使用することで、「何時〜何時まで照射」「朝夕は弱光、日中は強光」といった時間ごとの照度制御が可能になります。
昼夜リズムを人工的に再現できるため、発生率や見た目の安定化に大きく貢献します。きのこごとの光感受性に合わせた照明スケジュールが組めるのも大きなメリットです。

●遮光・反射フィルム(栽培室補助資材)

光を反射させて全体の照度を均一にしたり、不要な光の侵入を防ぐための資材です。室内に設置することで、照度ムラや一部だけ色が変わる現象を防ぐことができます。
設備投資の少ない栽培室でも、こうした補助資材の工夫で光環境を改善できる例も多くあります。

きのこ栽培を安定させるためには、温度や湿度だけでなく、「光の管理」も非常に重要な要素です。光合成は行いませんが、きのこは光の有無や強さに敏感に反応し、照射の仕方によって発生率や形・色味に違いが出ることがわかっています。
特に室内の菌床栽培では、自然光ではなく人工照明で環境をコントロールすることが一般的です。そのため、照明機器や調光タイマーなどの設備を整えることで、日々の管理がしやすくなり、結果として収量や品質の安定にもつながります。

これからきのこ栽培を始めたいと考えている方や、照明環境の改善を検討している方は、ぜひ一度、照明設備や管理方法の見直しをおすすめします。資料請求やご相談なども受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。