光合成を最大化。有孔ダクトを使った上手な気流の起こし方

2023/08/30

農業用コントローラ

葉の周りの気流が早すぎたり停滞すると、光合成の進み具合もあまり良好ではないようです。[図1]


▲[図1] 風速と光合成速度の関係<引用元:矢吹万寿・宮川秀夫>


空気が停滞する場合には植物自身が放出した水蒸気や酸素が葉を層状に取り囲み、それ以上蒸散できなくなります。その結果、吸水も吸肥もできなくなり、CO2も取り込みにくくなります。この邪魔者を葉面境界層と呼んでいます。すぐに思いつく対応としては“循環扇を使って空気を循環させること”ですが、常時運転、間欠運転ともハウス内の空気をムラなく動かすというのは難しいようです。
そこで今回は、有孔ダクトを使った丁寧な気流の起こし方を紹介します。

有効ダクトの設置場所

暖房用の有孔ダクト(CO2は暖房機のファンに吹き入れます)またはCO2専用の有孔ダクトを全畝の先端まで設置します。CO2用ダクトファンは2~5万円程度のポータブルファンでも十分利用可能です。
各部位の風速は煙草や線香の煙で秒速50cm程度を目安に穴数、ダクト先端の開放具合で調節します。とくに暖房ダクトの場合、気流の確保、炭酸ガスの均一化に併せて、明確なハウス内の温度ムラ修正も可能となります。

有孔ダクトにより日中・夜間の送風を行うことで①葉面境界層の除去、②温度ムラの解消、③CO2の局所施用(換気下のCO2濃度均一化)、⑤病害の軽減、⑥果菜類の裂果対策など様々なメリットが期待できます。


▲左:[図2] 循環扇の風速ムラ(実測) 右:[図3] 有孔ダクトによる送風、CO2同時施用

換気温度に誤差が生じる原因と修正する方法

▲[図4] 作物の高さごとの光合成の働き具合 ※曇天日(グラフ左)晴天日(グラフ右)<引用元:愛媛大学>]


▲[図5] 作物の高さごとの光合成の働き具合 ※鹿児島スマート事業での測定風景(左)イメージ図(右) 


光合成を最大化させるためには、ハウスの隅々まで均一化させるだけではなく、作物の高さに合わせた場所にダクトを設置する必要があります。
[図4]は作物の高さごとの光合成の働き具合です。作物の高さごとに右にグラフが伸びているほど光合成が盛んな位置という意味です。作物上部は日当たりもよく、風も動きやすく、組織も若いことが多いため光合成の稼ぎが多い傾向にあります。
ところが地面にCO₂ダクトを設置した場合、稼ぎ頭の作物上部のCO₂濃度を濃くできていないため、光合成を多くすることができません。そのため、ダクトは作物の中上部に宙吊りに設置するのが良いでしょう。

換気温度に誤差が生じる原因と修正する方法


換気の設定温度を下回っているにもかかわらず換気が始まり、日中温度が低くなってしまう例が多くみられます。事例の多くは換気温度センサに直射日光が当たってセンサ自身の温度だけが上昇しています。すると計算よりも日中の積算温度、平均温度が確保できずに生育調節が不発に終わってしまうのです。

対策としては、①むき出しの温度センサに傘をかけて遮光する、②傘が深すぎて風がこもらないようにする、③風が抜ける場所にセンサを設置することです。




●ポイント

日射が直接センサに当たらないように注意してください。傘表面に白またはアルミ箔などで遮熱加工を行うことで、温度計測の間違いが軽減されます。[図6]


▲[図6] センサの設置方法



ハウス内の環境をモニタリング・制御するのであれば、計測の正確さは必須になるため精度の高い計測器を使う必要があります。
弊社の温湿度センサは百葉箱のような木箱の中に格納されているため、直射日光の影響を受けにくい構造になっています。さらにセンサは乾湿式温湿度計で、検定器並みの精度をもった正確さが特徴です。


▲[図7] ファン付き木製センサボックス





【執筆】
アグリアドバイザー 深田正博

熊本県野菜専門技術員・普及指導員の経験があり、現在は株式会社ニッポーのアグリアドバイザーとして現場目線の栽培指導やセミナーの講演を行う。




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