日射比例潅水の重要性~生育の大前提は気孔が開いていること~

2023/09/22

農業用コントローラ

作物の生育で重要なのは「気孔が開いていること」

植物は葉裏にある気孔を開いていれば、体内水分の蒸散と根からの吸水を継続します。あせて肥料吸収、炭酸ガス(CO₂)の取込みも継続するため、光合成のお膳立てが完成します。[図1]

この時、土壌水分が不足してくると蒸散を続けることができなくなり、作物は身を守るために気孔を閉じます。その結果、蒸散による肥料吸収、体温上昇の抑制、炭酸ガスの取込みが出来なくなり、すべての過程が台無しになってしまいます。「気孔が開いていること」が作物生育の大前提なのです。


▲[図1]


過不足のない潅水の手法として日射の程度に応じた潅水調節「日射比例潅水」が標準化してきました。[図2]の折れ線グラフでは日射量の増減(赤線)と葉からの蒸散量(緑線)の動きが相似関係にあることがわかります。
蒸散量は根からの吸水量に近い数値の動きですので、これに沿った潅水を行うことで「過不足がない」潅水を行うことが可能となります。

しかし、葉からの蒸散量はなかなか計測できませんので、同じ動きをする日射量を計測することで蒸散量に近い潅水を行うことが可能となります。これが“日射に比例して潅水する”という語源になっています。
日射に応じた潅水調節を行った結果、「高糖度」トマトの収量が明確に伸びました。[図3棒グラフ]



▲[図2<新田益男,玖波井邦昭,小松秀雄,福井淑子,澁谷和子.“根域制限栽培での日射比例かん水制御による高糖度トマトの多収技術”,2009>]


▲[図3]


さらに、日本国内の“軒が低く容積が小さいハウス”は過湿傾向にあります。湿度が高く飽差が低い状況では蒸散量は通常より少なくなっており、当然吸水量(≒潅水量)も減ってくることになります。

ニッポーの日射比例潅水コントローラ「潅水ナビ」は日射量での判断を飽差値により補正を行い、より実際の吸水量に近い潅水を行います。これらの制御で過不足のない潅水、つまり気孔が閉じにくい環境を作っていくことで炭酸ガス(CO₂)の施用効果を明確にすることができるのです。

圃場ごとに異なる日射比例潅水の方法


土耕栽培において最も重要なことは、「圃場ごとに異なる条件下(※1)で必要な潅水量は大きく異なり、それぞれに合わせた日射比例潅水を行う必要がある」ということです。
※1:排水性、保水力、潅水チューブ長、ポンプ圧力、チューブの種類など

一般的な考え方に土壌水分計で測定し、潅水の量とタイミングを判断する方法がありますが、実際に圃場各地点を測定してみると土壌水分の増減(の動き方)が大きくバラつくことが分かります。乾燥しやすい場所は土壌水分が上下する間隔が短く、水持ちがよい場所は水分が減少するまでの時間が長くかかっています。この状態で1、2ヵ所だけにセンサーを設置して潅水のタイミングを判断してしまうと、潅水量を大きく間違える原因となっています。
それを解決するため、ニッポーの日射量と飽差での潅水判断は、“圃場全体から蒸散した分の水分をこまめに補い、一定の土壌水分レベルを日中維持する“としています。

日射比例潅水に必要な点滴チューブの活用

日射の強さに応じて細かく潅水調節をするためには、勢いよく吐出する散水タイプのチューブではなく、少量の水を的確に滴下できる点滴タイプのチューブが必要になります。

点滴チューブには次のようなメリットがあります。
①水がゆっくりと土に浸込み根圏の酸素を追い出さない(根が水没しない)
②低水量なので根が浸出した有機酸を除去しない(根の肥料吸収を邪魔しない)
③地表面の水分が少ないため病害の発生を抑える
④潅水ムラが少なく潅水量・施肥量が計算できる



●点滴チューブの選び方

・肥料による詰まりを回避するため、基本的に毎シーズン更新できる低価格であること
・数十メートルの畝でも吐出量のムラがないこと[図4]

▲[図4]



高価で圧力補正機能があるチューブに潅水ムラ、詰まりがないとは限りません。ニッポーではその正確さを確認した廉価な点滴チューブの取り扱いもあります。詳しくはお問合せください。




【執筆】
アグリアドバイザー 深田正博

熊本県野菜専門技術員・普及指導員の経験があり、現在は株式会社ニッポーのアグリアドバイザーとして現場目線の栽培指導やセミナーの講演を行う。




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