日射量と生育の関係とは?ハウス栽培で知っておきたい日射積算の考え方

2023/05/26

農業用コントローラ

日射量は農業気象資源に位置づけられ、作物の生育と作柄を左右します。環境に手を加えるハウス栽培にとっても、日照は他の環境要因に影響を与える重要な役割を果たしています。

自然の恵みである太陽光を最大限活用するために、日射と光合成、作物との関係をご紹介します。

生産者が知っておくべき日当たりとは


日当たりを考える場合、太陽光の強さである日照と太陽光が当っている時間、その結果として作物が取り込む太陽エネルギーの量に分けて考える必要があります。

日照時間

太陽の直射光が地表に当たっていることを日照といいます。気象庁では直達日射量(地上に到達する光の量)が0.12kW/㎡以上(※影ができない程度)を日照と定義しています。日長が一年のサイクルで変動する光周期に気象条件が加わって日照時間は変動します。

東京の場合、1日当たりの平均日照時間は、6月が13.1時間、12月は9.1時間と季節によって4時間の差があります。



照度

照度とは、一定面積に照射された光の明るさの度合いを指し、lx(ルクス)の単位で表します。太陽光の場合、計測地点の緯度によって異なる太陽光の入射角と、雲の発生など気象条件により変化します。


日射量

日射量は日照によりもたらされる太陽光からのエネルギー量を指し、直達日射量と散乱日射量(直達日射以外から受ける光エネルギー)を合計したものを全天日射量と呼びます。

日射量はエネルギー(熱量)の単位であらわしkW(キロワット)/㎡が用いられ、1時間あたりに受けた太陽光の積算エネルギー量は、kWh(キロワットアワー)/㎡で表します。kWhは1時間を単位としたエネルギー量であるため、積算日射量を表す場合の単位にはMJ(メガジュール)/㎡が用いられ、1kWh/㎡の換算値は3.6MJ/㎡になります。

【例】日射量(1kW/㎡)×時間(1時間)=積算エネルギー量(1kWh/㎡)=積算日射量(3.6MJ/㎡)

日射量と光合成の関係


日射量が作物の生育に影響するのは、光合成という植物特有のメカニズムがあるためです。光合成による反応の仕方は作物によって異なるため、ハウス栽培ではこの点を考慮して日照を効果的に活用する必要があります。

植物は二酸化炭素を吸収し酸素を排出する光合成によるガス交換と、酸素を吸収し二酸化炭素を排出する自らの呼吸によるガス交換を同時に行っています。光合成によるガス交換は日照により起こるのに対し、呼吸によるガス交換は一定の量で保たれています。
日照を受けることで光合成によるガス交換がはじまり、光の強さに比例してその量は増加していきます。この時、光合成により吸収する二酸化炭素の量が、呼吸により排出する二酸化炭素の量と同じになる照度を光補償点といいます。

さらに、照度が高まるにつれて光合成の速度は増加し、光合成産物(糖と二酸化炭素)の生成が促進されますが、一定の照度に達すると光合成の速度は飽和状態に達します。その際の光の強さを光飽和点といいます。
光補償点を上回る光を得られない場合、植物は光合成産物を蓄積することができないため十分に生育することができません。また、光飽和点は日照を必要とする度合いをあらわし、植物の種類によって異なります。

日射量と生育の関係


これらの太陽光に対する反応の違いによって植物を分類することができます。

●陽生植物

必要な光補償点:1,000lx 以上
必要な光飽和点:40,000〜70,000lx
必要な時間(1日当たり):6時間以上
※日陰では十分な生育が見込めません。

例:イネ、小麦、とうもろこし、大豆、トマト、スイカ、カボチャ、サツマイモ、キャベツなど。


●半陰生植物

必要な光補償点: 500~1,000lx
必要な光飽和点: 20,000~40,000lx
必要な時間(1日当たり): 3~4時間

例:イチゴ、ホウレンソウ、レタス、サトイモ、ネギなど。


●陰生植物

必要な光補償点: 100~500lx
必要な光飽和点: 10,000~20,000lx
※直射日光に長時間当たると、日焼けし枯れる場合があります

例:ミツバ、クレソン、ミョウガ、ミズナ、シソなど。


他にも、光補償点と光飽和点の日照の強さ(照度)に対する植物の特性に加えて、花芽分化が日照時間の影響を受けるという植物の種類による特性があります。

●長日性植物

初夏から夏至の日照時間が長くなる時期に花芽分化を発生し着花します。
例:ダイコン、キャベツ、白菜など。

●短日性植物

夏至から冬至の日照時間が短くなる時期に花芽分化し着花します。
例:イネ、ダイズなど。

●中性植物

日長の影響を受けず一定の生育期間を経れば着花します。
例:トウモロコシ、キュウリ、トマト、エンドウ、ヒマワリなど。



以上、日射量と生育の関係についてご紹介しました。日射量は作物を育てる上で重要な指標の1つになります。ニッポーの農業用コントローラは日射センサをはじめとし、ハウス内の環境を正確に把握し制御するための豊富な機能を備えています。ハウス栽培の環境制御をご検討の際にはお気軽にご相談ください。

▼関連記事


お電話でのお問い合わせ

0120-963-166

携帯電話からは048-255-0066